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【参考】天候判断について

  • 執筆者の写真:  槍平小屋
    槍平小屋
  • 8月12日
  • 読了時間: 10分
雨の槍平
雨の槍平

登山前には天気の情報や登山道の情報が気になるものですが、

小屋に直接問い合わせするよりも以下に記す情報を確認してもらう方が確実です。


小屋の全スタッフが天気の影響や登山道への問い合わせに精通しているわけでは無く、

繁忙時は担当以外細かな天気予報のチェックが出来ていない場合もあります。


小屋番も天気予報サイトなどネット上の情報で予報のチェックをしています。

お問い合わせ頂いても以下に記す情報以上のものは持ち合わせていないことを、

ご承知おきください。


天気予報に併せてお問い合わせの多い

『沢の増水について』のお知らせはこちらの記事をチェック!

↓↓↓ 



【目次】


《天候判断参照サイト目次》

  1.山の天気予報(ヤマテン)※有料サービス

    ‣ 雨雲の動き

    ‣ 今後の雨

  5.週間寒気予報 (株)吉田産業海洋気象事業部

  7.Windy


① 小屋発表の公式最新情報


「天気はどうなりますか?」

「沢の増水状況はどうですか?」


悪天候時に上記のようなお問い合わせのお電話を多く頂きますが、

槍平小屋の現在天気や、スタッフが把握している増水状況などの

天気・増水に関する最新情報は、

槍平小屋 X(登山道情報)にて発信しております。


ree

← クリックして確認!



まずはこちらをフォローして頂いた上でご確認ください。

※注意 )Xの仕様で、フォロー外からは最新情報順での情報確認はできないようです。



シーズン中は現地天候情報を発信しているほか、


【登山道注意情報】登山道の通行に注意が必要な時に発表する情報

降雨に伴う増水が軽視できない規模になった場合や、

残雪や降雪による影響を注意喚起する場合などに発表します。


【緊急登山道情報】命に係わるリスクが予見できる場合に発表する情報

気象庁が発表する気象警報発令時、および

激しい降雨による徒渉不能レベルの増水が確認・確信できる場合に発表します。

この情報が発表されている時は入山・山中での行動はしないようお願いします。

無視して行動していた方が死亡した事故も発生しています。



② 天気予報・天候判断について


今後の天気予報については

山小屋スタッフも専門家が発表する天気予報の情報を参照しております。

以下に槍平小屋スタッフが活用している天候判断の参考サイトの紹介と

活用の実際をお知らせいたします。

(この記事では天気図などに馴染みが無い方向けのご紹介となっております)



どの予報サイトでも言えることですが、

槍ヶ岳の天気は高山市の天気を参考にして下さい。


槍ヶ岳は上高地側からの入山者の方が多く、松本市の天気を参考にしがちですが、

槍穂連峰の天気は高山市の天気をベースにして考えて下さい。


一般的に西から入った風が槍穂連峰にぶつかって松本に流れます。

山の上で冷やされた空気が水分を落とし、

松本に流れていくのが平常のパターンなので

松本市は快晴でも、高山市・槍穂連峰はぐずついた天気という状況となることが少なくありません。


《天候判断参照サイトリンク一覧》




1.山の天気予報(ヤマテン)※有料サービス(月額550円


予報を行うのは山岳気象予報の第一人者である猪熊さんが率いる専門家チーム。

多くの予報サイトがコンピュータの予想計算結果から予報を導き出すのに対して、

ヤマテンではこれらの予報では表現できない、

山特有の気象条件や地形を加味して山に詳しい気象予報士が手作りで作成した予報

を出しています。


色んな気象情報をや山のノウハウを総合して、

その山に応じた予報を提供してくれるヤマテン予報は

スキマ時間に必要な情報を総括して確認することが出来、

小屋番として繁忙時に特に重宝しています。


※ 月に何度も山行するような登山のヘビーユーザー にとって

天候判断にかかる時間を大幅に短縮できるサイトとして重宝されています。


ヤマテン予報は、低体温症や落雷、沢の増水など

具体的な気象リスクについて触れているのも特徴。


※ 山の気象リスクについて詳しくない登山入門者 にとって

入門者が気が付きにくい平地と違う気象環境と、

そこからくるリスクを示唆してくれる安全の指標としてお勧めの予報サイトです。

【ポイント】


〇 山の天気の専門家が手掛ける、山の天気予報

〇 天気によって引き起こされるリスクも確認できる

〇 リスクが大きい時には大荒れ予報が発表される

〇 直前の行動判断に良い

〇 雨雲・雷の気象レーダーに山の位置が示される

〇 (中・上級者向け)専門天気図のページとその解説動画が充実している

           →登山と天気に関する学習ツールとしても優秀




日本における気象情報の中枢はやはり気象庁です。

国の公式気象機関による信頼性の高い予報。

高山市(槍ヶ岳のある奥飛騨温泉郷神坂)の天気予報のほか、

雨雲レーダーや、地図上にメッシュ表示する形での今後の雨予報、

雷情報や台風情報などが得られます。


私が特に活用するのが、以下の情報です。


‣ 雨雲の動き (高解像度降水ナウキャスト)

 3時間遡っての降雨状況と今後1時間の降雨予報をメッシュ表示で

 視覚的に確認できます。

 不安定な天気の時に入下山や外作業を行う際、

 行動開始直前の天候判断に多用しています。

 雷活動度など雷の情報もこちらで確認。


 15時間先までの1時間ごと(6時間先までは10分間隔)の降水量の予測値を表示

 上記の雨雲の動きに併せてこちらも確認することが多いです。

 過去12時間の30分おきの降水量分布も確認できるので

 特に入下山の際のタイミングを計る判断材料として活用しています。


気象庁の天気予報の更新(見直し)は5時、11時、17時の1日3回。

【ポイント】


〇 日本の公式気象機関による信頼性の高い予報。

〇 『雨雲の動き』『今後の雨』は雨気があるときの行動開始時に重宝

〇 『雨雲の動き』は5分ごとに更新

〇 『今後の雨』は10分ごとに更新

〇 天気予報の更新(見直し)は5時、11時、17時の1日3回。



《特徴》

  • 民間大手気象会社で、気象庁データを元に独自編集。

  • 1時間ごとの天気・気温・降水量予報が見やすい。

  • 「山の天気」専用ページでは主要山岳(例:槍ヶ岳・穂高岳)の予報を提供。


私(槍平小屋4代目)と支配人が多用しているのは日本気象協会のアプリです。

当日と翌日の1時間ごとの天気(高山市の天気)がすぐに確認できるほか、

2週間先までの長期予報と降水量の見込みも確認できます。

高山市中心部と槍穂の稜線では距離も高さも離れてはいますが、

数日先の予報を含めてざっくりと短時間で情報を確認できます。

入下山日の検討やヘリ作業日の見通しなど、

期間で天気を捉えたいときに活用しています。


予報の見直しは偶数時(2時間おき)に行われています。

【ポイント】


〇 無料で使いやすい携帯アプリがある

〇 3日先までの1時間ごとの天気予報・降水量が確認できる

4~11日先までは6時間単位、12日目以降は1日単位で確認できる

〇 天気予報の更新(見直し)は偶数時(2時間おき)に行われる



《特徴》

  • 独自の観測網(アプリ利用者の気象投稿含む)+独自モデルで予報。

  • 雨雲レーダーの動きが滑らかで見やすい。

  • 雷やゲリラ豪雨の発生をプッシュ通知で知らせる機能あり。


登録地点は登山口である『奥飛騨温泉郷神坂』(もしくは中尾)に設定できます。


無償版でも3日先までの1時間ごとの予報と、10日先までの予報が確認できます。

予報は10分毎に逐次見直しているので、変わりやすい気象条件の際に重宝します。

【ポイント】


〇 高山市の市街地より山に近い地点での天気予報が確認できる

〇 3日先までの1時間ごとの天気予報・降水量が確認できる

〇 10日先までの天気予報が確認できる

〇 天気予報の更新(見直し)は10分毎とこまめである

〇 無料版だと3時間先まで・5分間隔の雨雲レーダーを確認できる



(株)吉田産業海洋気象事業部が公開している寒気予報。

気象庁の全球数値予報モデルGPV(GSM)を使用し、

500hPa(上空5000m付近)と850hPa(上空1500m付近)の寒気の状況を図で表示しています。


4・5月の春の残雪期や、シーズン後半10月の晩秋の時期、

寒気が流入した影響で

〝高山や松本の市街地は晴れでも、山は暴風雨や吹雪〟という状況になることがあります。

また、雪にはならずとも冷たい雨が体温を奪い、

低体温症となるリスクも考えることができます。


春や秋の山の気象リスクを推測するツールとして活用しています。

【ポイント】


〇 高山市の市街地より山に近い地点での天気予報が確認できる

〇 3日先までの1時間ごとの天気予報・降水量が確認できる

〇 10日先までの天気予報が確認できる

〇 天気予報の更新(見直し)は10分毎とこまめである

〇 無料版だと3時間先まで・5分間隔の雨雲レーダーを確認できる


GPVとは気象庁や米国海洋大気局等の気象予測モデルをスーパーコンピュータで計算した予測値を指します。地図上にメッシュ表示される形で視覚的に降雨や雲の予報を確認できます。


《詳細予報》:5kmメッシュ

『中部』を選択し、『雨量・雲量』を選択すると、1時間毎の予測を39時間先まで予測


《広域予報》:20kmメッシュ

『西日本』を選択し(西から雲が流れてくるのでこの視点が分かりやすい)、

『雨量・雲量』を選択すると、11日(264時間)先まで予測。


【ポイント】


〇 視覚的に降雨予報を確認できる。

〇 気象庁の『今後の雨』より長期的なメッシュ表示予報なので、   数日にわたる山行計画の参考にしやすい。


7.Windy


ウインディ(Windy)は、世界中の天気や気象データを地図上で視覚的に確認できるウェブサービス・アプリです。複数の予報モデルに対応しており、比較も出来る。

世界全域を対象にしているため、日本の局地予報はやや粗いですが、

アニメーションマップで高度別風・広域の天気傾向を直感的に把握できます。

地表だけでなく高度別の風や気温も確認可能です。


【ポイント】


〇 世界規模の気象マップで、複数の予報モデルに対応 〇 視覚的に天気傾向を把握しやすい

〇 高度別の風・気温の予測を見れる


③ (参考)各種天気予報の活用例


  • 1週間前〜3日前

    • Windy → 天気傾向(風・気温など)と気圧配置の把握

    • 週間寒気予想 → 寒波・降雪リスクの確認

    • tenki.jp・ウェザーニュース → 概況と週間予報チェック

  • 3日前〜前日

    • ヤマテン → 山域別の具体的リスク確認

    • GPV → 雲量・降水の時間別詳細予測

  • 当日朝〜行動中

    • 気象庁 雨雲レーダー → 短時間降水の有無

    • ヤマテン・ウェザーニュース → 雷・強雨のアラート受信


上記はあくまで1例で、それぞれのサービスにはさらなる活用・応用の方法があります。


例えば、GPVを活用して以下の予測を深堀り可能です。

・雲量分布からガス発生や視界不良のリスクを把握

・高層雲・中層雲・低層雲を分けて見ることで、晴れ間の可能性を探る

・冬山での降雪量の見積もりに活用


山岳気象について理解を深めれば、

天気図や予報から汲み取れる情報は確実に増えていきます。


ただピークを踏むことだけを目的にせず、

登山のたびに自ら天気を調べ、考え、判断する――

そうして能動的に山と向き合った分だけ、

登山の価値と楽しさは、きっと何倍にも広がるはずです。

 
 
 
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